『ジャングル大帝』

 昨年末に出版されていた『漫画少年版 ジャングル大帝』豪華限定版をようやく購入しました。

 『ジャングル大帝』は、手塚治虫作品中で十指に入るであろう知名度を誇っているにも拘わらず、正確な内容があまり知られていない漫画のひとつではないかと思われます。

 簡単に言ってしまえば、読まれていないのです。

 若い世代は当然としても、私と同世代――1965年の「国産初のオールカラー・連続テレビアニメーション」版を楽しんだ世代――であっても原作を読んだことのある人は少数派であると考えて間違いありません。

 今だから分かることなのですが、これには原作漫画の「完結した単行本」が1965年当時には存在していなかったという事実が大きく関わっています。
 原作の連載が完結して10年以上経過しているのに、連載の最終回分までを収録した単行本が一度たりとも発行されたことがないという、現在では考えられないような状況があったのです。
 それ故に、当時テレビアニメ版に親しんだ少年たち――もちろん、私も含まれます――は、アニメーション版と原作とがあんなに違っているなどとは想像すらできなかったのです。

 アニメーション第2部『新ジャングル大帝 進めレオ!』が放送された1966年から1967年にかけて、ようやく最終回まで収録した単行本が発行されました。
 しかし、多くの少年たちの心は既に『ジャングル大帝』から離れてしまっていました。
 第2部のアニメーションは低視聴率に喘いで打ち切られました。
 私も途中までで見るのをやめたのではなかったかと思います。
 当然のことながら、原作単行本を手に入れようとか読もうとかいう意欲が湧くことはありませんでした。

 私が原作を最後まで読み通したのは講談社手塚治虫漫画全集が出た1977年のことになります。
 圧倒的なストーリーに打ちひしがれました。
 手塚治虫のファンでよかったと、心底思いました。

 その第3巻に付された手塚自身による後書きを読み、オリジナル原稿の多くが失われてしまっており、全集に収録されているものがリメイクであることを初めて知りました。(そう思って見れば明らかに絵柄が異なるので、素人でも判別できます。)
 そうと知ればオリジナルを読みたくなるのが人情というものです。

 名著刊行会刊行の『手塚治虫初期漫画館』に『ジャングル大帝』オリジナル単行本2冊が復刻収録されることを知った私は、迷うことなく購入しました。1980年のことでした。
 上で触れた事情のとおり、この版にはオリジナル版の途中までしか収録されていません。
 ますますオリジナルの全容を知りたいという思いは募りました。

 その後、手塚治虫ファンクラブ京都が掲載雑誌「漫画少年」からの復刻に踏み切りましたが、既に脱会していた私は入手機会を逸してしまいました。(この復刻を巡ってはいろいろと軋轢が起きたようです。私自身も思うところがありますが、それはまた別の機会に譲りたいと思います。)

 それほど渇望していたオリジナル復刻版が刊行されたというのに、今頃買ってる私ってどうよ?などという気がしてなりません。
 結局、だいぶ前に復刻情報はつかんでいたのに予約を忘れちゃっていたという、最近とみに多いオチなんです。
 ちゃんと定価で入手できたのが奇蹟なのかもしれません。
 肝腎の中身は非常に質の高い印刷で大満足。
 おまけの復刻原画も素晴らしい出来です。
 ファンならば必携の本といってよいでしょう。


 それはともかくとして、『ジャングル大帝』が漫画史に残る金字塔のひとつであることは疑いを入れません。
 未だ原作を読んだことがないという方にはぜひとも一読をお薦めします。
 なにも私のようにオリジナル版にこだわる必要はありませんので、最近出た文庫全集あたりでも十分であると思います。

漫画少年版 ジャングル大帝
小学館クリエイティブ
手塚 治虫
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