『虐殺器官』

 伊藤計劃(Project Ito)。

 こんな凄い作家が存在していたことをつい最近まで知りませんでした。
 たまたま書評欄で取り上げられているのを見かけなかったら、知らないままで終わっていたかもしれません。
 珍しく朝日新聞に感謝、です。


 『虐殺器官』は、その伊藤計劃のデビュー作にあたります。
 刺激的、且つ変わったタイトル。
 書店で見つけた文庫本は、インパクト抜群のカバーを纏っていました。
 表紙の大半を覆っている腰巻には伊坂幸太郎や宮部みゆきの賛辞が躍っています。
 早速購入し、読み始めました。

 近未来SFというジャンルや主人公がアメリカ軍の特殊部隊に属する「暗殺」のプロであるという設定などは、書評からの情報で承知していました。
 残酷描写も頻出するのだろうと、予め覚悟していました。
 冒頭から胸の悪くなるような描写が続きます。
 書評を読んでいなかったなら、まず手に取ることのなかったであろうタイプの本。

 しかし、いつの間にか物語世界に引き込まれていく自分がいました。
 なによりも文章力が確か。
 そこから感じられる心地よさによって、えげつない描写が一種必然へと昇華されているようにすら感じさせられたのでした。

 当然のごとく、一気に読了。
 今更ではありますが、紛うかたなき傑作だと書かずにはいられません。

 
 作者が34歳という若さでこの世を去ってしまったため、遺した作品はほんの数冊にすぎないとのこと。
 もちろん、残る作品も全て読むことを即座に決意しました。

 伊藤計劃本人については本書解説でもかなり詳しく触れられています。
 その中で引用されていた御母堂の言葉には思わず涙が出ました。
 これも今更ながら、日本SF界――文学界はほんとうに惜しい作家を喪ってしまったのだと思わずにはいられません。



虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
早川書房
伊藤計劃

ユーザレビュー:
つまらない悪い意味で ...
ゼロ年代SFの最高峰 ...
圧倒的なリアリティー ...

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